1990 年 19 巻 1 号 p. 91-94
IABPや補助人工心臓による補助循環施行症例の術中・術後の心機能評価はこれまで血行動態以外に効果的なものはなく, 経食道ドプラ断層(TEE)を含めた超音波診断法がICUで行える非侵襲的診断法として重要性が増してきている。過去4年間の補助循環施行症例44例とIABP挿入不能3例を対象として補助循環時の心機能評価におけるTEEの臨床的意義に関して検討した。IABP挿入不能例3例の原因は下行大勤脈瘤や動脈解離によると診断され, 直ちに挿入操作を中止した。LVAD施行2例, RVAD施行1例, およびIABP施行34例ではTEEによる経時的心機能評価により, 十分な心機能回復を確認し補助循環よりの安全な離脱に成功した。経食道ドプラ断層は高度心不全を伴う補助循環症例の総合的心機能評価及び術後管理に集中治療室で簡便に行える唯一の実際的な診断手段であると結論した。