人工臓器
Online ISSN : 1883-6097
Print ISSN : 0300-0818
ISSN-L : 0300-0818
ハイブリッド人工臓器
―人工肝臓を例として―
赤池 敏宏
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 19 巻 3 号 p. 1042-1046

詳細
抄録

多くの臓器を対象に人工臓器研究が活発化しているが、肝臓の代謝機能は非常に高度で多角的であるので、その機能を完全に代行する人工臓器の実現は、事実上不可能である。そこで、肝実質細胞を適当なマトリックス上で培養して装置に組み込み、高級な機能をほとんど丸ごと利用し、さらに細胞機能の制御を目指そうというハイブリッド型人工肝臓の研究が展開されている。そのためには、高分子材料設計により、必要に応じて肝細胞の特異的な接着・伸展・分化機能発現・長期生存と増殖を制御することが可能とならなければならない。筆者らは、肝実質細胞の有する物質を取り込むアシアロ糖タンパクレセプターに着目し、対応するリガンドモデル高分子(ガラクトース側鎖を有するポリスチレン誘導体)の設計と細胞接着用基質への転用に成功した。この培養系に更にEGF等を添加することにより、球形状態であった細胞の多数が集合した、より長時間培養の可能な高密度培養系へ変換させることも可能となった。

著者関連情報
© 一般社団法人 日本人工臓器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top