人工臓器
Online ISSN : 1883-6097
Print ISSN : 0300-0818
ISSN-L : 0300-0818
人工臓器の自己化:生体システムと人工臓器の適合化
雨宮 浩岩田 博夫
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 19 巻 3 号 p. 1047-1050

詳細
抄録

人工臓器の自己化を臓器移植との対比で考えた。臓器移植の場合Hostと移植臓器の主要組織適合抗原複合体(MHC)が同じであるほど、移植臓器は生着すなわち自己化されやすい。人工材料の生体適合性について熱心に検討が行われたにもかかわらず、臓器移植のMHCに相当する決定的な因子は見つかっておらずまた今後とも見つかることはないであろう。臓器移植ではMHCが一致しない場合免疫抑制剤を用いて、強制的に移植臓器の生着を試みている。人工臓器で移植の免疫抑制剤に相当するものは、抗凝固剤や抗炎症剤であるが現在のところ人工臓器の自己化にそれらの薬剤がそれほど決定的な役割をはたしているとはいいがたい。今後人工臓器の自己化を行なうため薬剤の使用方法の研究さらに新しい薬剤の開発が望まれる。最近の試みとしては、人工皮膚や人工血管のように人工材料と自己細胞をハイブリッド化し自己化を促進する試みがある。また未だ試みの段階であるが、患者の細胞へ正常遺伝子を組み込む遺伝子レベルでの自己化の試みがある。今後はさらにこれら自己化された細胞と人工材料を組み合わせて臓器の再構築が行ないin vitroですでに自己化された人工臓器が作製されるであろう。

著者関連情報
© 一般社団法人 日本人工臓器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top