人工臓器
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人工血管の現状と問題点
井島 宏斉藤 大村井 正榊原 謙筒井 達夫三井 利夫堀 原一
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1990 年 19 巻 3 号 p. 1060-1063

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抄録
小口径動脈と静脈を除けば, 人工血管に問題は少なくなったとの印象があるが, 臨床外科的には未だに多くの解決すべき問題を指摘できる。
1) 大動脈で, low porosity woven Dacronを用いる場合には, この人工血管の硬さのために縫合は困難で, 組織との密着性が悪いこと, 血液凝固系との関係でextra-low porosityと称されるそれでも, アルブミン加工などの補助的処置を必要とする場合があること, また長期的にも仮性内膜は不整で, 内皮細胞様細胞の増殖は期待できないことなどが挙げられる。
2) 大腿動脈領域に用いられてきた人工血管には, Dardick biograft, EPTFE, Dacronなどがあるが, これらのうちで自家静脈に匹敵する遠隔開存成績を挙げ得たのはSauvage EXS knitted Dacronのみである。しかし, これも末梢側吻合部が膝上部までであり, 血流速度が重要な開存率向上因子であろうと考えられる。この領域のEPTFEの晩期成績には, 吻合部内膜肥厚が大きく関与し, 抗血栓性とbiocompatibilityの適当な配分を考慮せねばならないと思われた。
3) 静脈用人工血管としては, ほとんどの施設がEPTFEを用いているが, 好成績は大静脈領域のみである。抗血栓性があるとはいえ, 血流速度が遅いと早期閉塞もあるため, 動静脈瘻などの補助手段を要する。
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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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