1990 年 19 巻 3 号 p. 1087-1091
抗血栓性材料K III 2塗布パイパスチュープを用いて6例に左心バイパス、1例に右心バイパス、1例に両心バイパスを行い、その抗血栓性について肉眼的及び電顕的に検討した。活性化凝固時間を150~200秒にコントロールした条件下で、補助流量1.81/min以上の成人症例においては肉眼的にも電顕的にも血栓の形成はなかった。しかしK III 2塗布パイパスチュープを用いても小児症例では2例中1例に肉眼的血栓の形成を認め、他の1例にも電顕的に明かなfibrin networkの形成を認めた。また補助流量が1.51/min以下と低値であった成人症例1例にも電顕的に血小板の凝集およびfibrin networkの形成を認めた。対象症例中、非処理PVCチューブを用いた1例では同様の条件下でも電顕的にfibrin networkの形成を認めた。
成人症例で補助流量1.81/min以上と充分な流量の得られたものでは、本抗血栓性チューブの有用性が認められたが、小児症例および補助流量の少ない症例では本処理法でも限界があると考えられた。