人工臓器
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人工血液“ネオレッドセル(NRC)”の性能と安全性
薄場 彰宮沢 正紹三浦 純一遠藤 幸男井上 仁元木 良一坂口 圭介鈴木 一比好上谷 利治
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1993 年 22 巻 2 号 p. 554-559

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抄録

ヘモグロビンをリボソームと呼ばれる脂質2分子膜でマイクロカプセル化した人工赤血球ネオレッドセル(NRC)を開発し、出血に対する輸血効果と安全性について犬を用いて実験的に検討し以下の結論を得た。出血性ショックに対する輸血実験では末梢血管抵抗が減少し、心拍出量が増加して左心負荷軽減効果がみられた。NRCの低粘度に起因すると思われた。酸塩基平衡ではacidosisの進行が軽減した。粒子径の小さなNRCが末梢組織まで充分酸素を供給したと思われた。ショックにもかかわらずNRC内包ヘモグロビンの変性は軽微であった。リボソーム膜の保護効果と思われた。イノシトールヘキサリン酸添加によりNRCは天然赤血球の2~4倍の酸素を運搬した。またNRCによる全血交換実験では長期間生存し、酸塩基平衡、生化学検査、血糖値、乳酸値に異常なく、組織学的にも網内系への一時的とり込み以外特に問題は認められず、出血性ショックに対してNRCは赤血球より優れていると思われた。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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