1994 年 23 巻 4 号 p. 1011-1017
脳分離体循環を脳循環の補助手段とした胸部大動脈瘤症例4例に対し, 近赤外分光法により脳内酸素量の変化を連続測定し, その脳循環モニターとしての有用性を検討した. 脳分離体外循環方法は, 最低咽頭温平均23.4℃で右腋窩動脈より450から750(平均625)ml/min, 左総頸動脈から180から400(平均308)ml/min灌流した. 4例中3例では脳内酸素量は体外循環開始直後に低下したが, その後は脳分離体外循環中もほぼ一定値を保った. 残る1例では,右腋窩動脈からのみの脳灌流では脳内酸化Hbの減少, 還元Hbの増加を認めたが, 左総頸動脈からの脳灌流を追加することにより酸化Hbの増加と還元Hbの減少を認めた. 4例すべてにおいて脳灌流量と脳内酸化Hb, 還元Hbの変化はそれぞれ正および負の一次相関を得, 近赤外分光法による脳内酸素量変化測定は脳循環モニタリングとして有用な手段となりうることが示唆された.