1994 年 23 巻 4 号 p. 1018-1024
本研究では, 血液透析等の体外循環によって引き起こされる白血球の一過性減少の病態モデルをラット腸間膜微小血管を用いて可視化・定量化し, 体外循環によって産出されるアナフィラトキシンC5aの白血球粘着亢進効果を明らかにすることを目的とした。細静脈血管内を転がり, 粘着する白血球の挙動を生体顕微鏡下に観察し, ビデオテープに収録再生し, 転がり(rolling)白血球数と粘着白血球数を定量的に測定した。C5aおよび再生セルロース透析膜によって補体系を活性化させたラット血清の投与によってrolling白血球数はほとんど変化しなかったが, 粘着白血球数はC5a濃度依存的に増加し, 投与後15分から20分で最大となりその後漸減した。したがって, C5aは末梢レベルにおいて白血球の血管内皮細胞への粘着を亢進させるといえる. 本方法は体外循環時における末梢循環レベルでの白血球の粘着挙動を観察, 定量化するための新しい手段を提供するものと考えられる.