1997 年 26 巻 4 号 p. 892-897
drug carrierとして生体親和性のあるα-TCP細粒を用いて, カルボプラチン(CBDCA)を封入し癌性腹膜炎の治療に関する実験的検討を行った。使用したα-TCP細粒はbiodegradableで多孔性を有する平均90μmの小球状物質である. Donryu ratを用いたα-TCP細粒の腹腔内投与では, 特に大網のmilky spot内に取り込まれていた。rat AH130癌性腹膜炎モデルでは, α-TCP-CBDCA-ip群はCBDCA-ip, ivに比し, 腹水中及び大網内でCBDCAを高濃度に持続させ徐放化が認められた. 同モデル治療群の生存日数はα-TCP-CBDCA-ip群で有意に生存期間の延長が認められた. α-TCP細粒をdrug carrierとして用いたα-TCP-CBDCAは癌性腹膜炎モデルで抗腫瘍効果・延命効果が認められ, 今後の臨床応用が期待される。