1999 年 28 巻 2 号 p. 452-457
ポリメチルメタクリレート (PMMA) 膜は吸着能が強く, エリスロポエチンや低分子ヘパリンの登場によって, 残血しやすくなったとされてきたが, 臨床観察の結果, 当医院で起こっている帯状の残血は, 血液入口部のヘッダー内の偏流に起因する滞留部での血栓形成 (三日月状) によって, 中空糸が閉塞し, 外周部が残血するというメカニズムであることを確認した. そこで, 血液の偏流・滞留の解消及び膜の流動抵抗を小さくすることに着目し, 牛血でのin vitro評価と数値計算による流動解析を行い, 臨床で確認するため4水準のダイアライザーを試作した. 臨床の結果, 偏流・滞留の減少の程度に応じて, 残血は好転した. さらに, PMMA膜で残血傾向の強い患者に使用したところ, 従来の仮説を覆して, ヘパリン量を減少させても残血は全く起こらなかった. 以上のことから, PMMA膜に関しては血液の偏流・滞留, 流動抵抗が残血の大きな原因であることが判った.