人工臓器
Online ISSN : 1883-6097
Print ISSN : 0300-0818
ISSN-L : 0300-0818
ボロン酸基含有ポリマーにより誘導されるラット肝細胞のスフェロイド形成とその長期培養化
青木 隆史広山 麻美讃井 浩平緒方 直哉菊池 明彦桜井 靖久片岡 一則岡野 光夫
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 28 巻 2 号 p. 480-485

詳細
抄録

3-acrylamidophenylboronic acid, N-(3-dimethylaminopropyl) acrylamide, そして2-hydroxyethyl meth acrylateからなる高分子を合成し, このキャスト膜表面上でラット肝細胞の初代培養を行った. フェニルボロン酸基を有する高分子材料上で培養した肝細胞は, 3日後には多層集合体を形成し, アルブミンの高い分泌能を示した. さらに, この多層集合体は30日間培養しても, アルブミンの分泌能を維持したまま安定に生存した. これに対し, フェニルボロン酸基を含まない材料上の細胞は, 伸展形態で接着して増殖するものの多層集合体の形成には至らなかった. フェニルボロン酸基は, グルコースのようなジオール化合物と結合する性質を持つことから, この官能基を有する高分子材料が, 細胞表面の糖鎖との相互作用を介して, 初代肝細胞のスフェロイド形成を誘導し, しかも, その機能を維持したまま長期間にわたって培養できるものと考えられた.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本人工臓器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top