ラッピングは半導体材料の製造工程や大型工作物の研磨,並びにそれらの形状修正及び創成と,長年に亘り培われてきた技術ベースに基づいて,産業界に広く用いられている加工法の一つである.一方,ラッピング研磨対象となる工作物の大型化に伴い枚葉方式の検討が現在進められており,その一つとして,著者らによって「小径工具を用いた揺動制御ラッピング方式」が検討されている.ところで,本方式における揺動制御を達成するにはラッピングシミュレーション技術が不可欠であり,著者らはPrestonによって提唱されているポリシングにおけるTraction理論をラッピングに適用してきた.そこで本論文においては,その適用精度を検証することを目的として,小径中空工具を用いた場合におけるラッピングシミュレーション,並びに実験検証を行った.その結果,Traction理論に対してラッピングにおける相対研磨角度の影響を追加考慮することによって,当該理論をラッピングに適用できることを示すことができた.さらには中空工具を用いることによって,中実工具では制御性が困難であった工作物中心付近での揺動制御ラッピングを達成することができ,本方式の有効性を示すことのできる結果を得た.