抄録
材料の組成を連続的に変化させることにより,材料単体の表裏に異なる機械的,熱的特性を付与する技術として傾斜機能材料があり,これまでにさまざまな分野において適用されてきた.本研究では,この傾斜機能材料を用いた切削工具において,切削抵抗が作用する方向に対して垂直となる方向に層間界面を有する傾斜機能工具を作製し,層角度を制御することによる耐欠損性への効果を検討した.また,材料組成による機械的特性を実験的に測定して,傾斜機能工具として適した傾斜層を提案し,実切削により測定した切削抵抗の作用方向に対し,垂直な界面を有する傾斜機能工具の有限要素法モデルを作成した.有限要素法解析の結果,層角度を制御することで,制御しない場合より刃先の一部に作用する応力が緩和されることを確認した.加えて,連続切削,断続切削の実切削においても,層角度を制御することで耐欠損性が向上し,耐久性の向上が実現できた.