砥粒加工学会誌
Online ISSN : 1880-7534
Print ISSN : 0914-2703
ISSN-L : 0914-2703
有機窒素化合物を蒸着源としたイオンビーム支援蒸着法による窒化炭素の作製と摩擦特性
田中 一平田代 那由他原田 泰典
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 66 巻 3 号 p. 154-159

詳細
抄録

近年の材料開発の進展に伴い,工具・金型への表面コ-ティングのさらなる高機能化が求められている.超硬質薄膜として窒化炭素が期待されているが,いまだ超硬質な窒化炭素は得られていない.著者らは窒化炭素薄膜の作製においてグラファイト状窒化炭素(g-C3N4)を蒸着源に用いる方法を提案しており,これにより高窒素含有な窒化炭素が得られている.本研究では,g-C3N4とヘキサメチレンテトラミン(HMT)の混合物を蒸着源とした窒素イオンビ-ム支援蒸着による窒化炭素膜の作製における膜の構造と組成に及ぼすHMTの混合の影響およびその摩擦特性について検討した. g-C3N4にHMTを20 wt.%混合したペレットを蒸着源に用いることで薄膜中の炭素に対する窒素の比がg-C3N4の1.07と比べて増加し,最大で1.24を示した.くわえて,HMT混合ペレットを用いることで膜中のC-N=C結合割合は増加した.イオンビ-ムの加速電圧を10 kVとした場合にはg-C3N4ペレットと比較し,C-N=C結合からC-C結合への変化を抑えることも可能であった.これらの摩擦特性として,Si3N4を相手材とし窒素置換雰囲気での摩擦試験の結果,g-C3N4ペレットを用いて高電圧で作製した薄膜は0.04と低摩擦を示した.

著者関連情報
© 2022 社団法人 砥粒加工学会
前の記事
feedback
Top