2017 年 72 巻 3 号 p. 213-218
化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)はヒトの咽頭炎や膿痂疹の起因菌として知られるが,時として,軟部組織壊死や多臓器不全を伴う致死性の高い劇症型レンサ球菌感染症を惹き起こす。化膿レンサ球菌が劇症型レンサ球菌感染症のような侵襲性疾患を惹起するためには,初発感染部位である咽頭や皮膚の上皮細胞層を突破する必要がある。本研究では,溶血毒素ストレプトリジンSによる宿主細胞内プロテアーゼの活性化と本菌が産生するプロテアーゼSpeBの協調作用が,菌体の上皮バリア突破に重要であることを明らかにした。また,化膿レンサ球菌はヒトプラスミノーゲンとトリセルリンの相互作用を利用することで,トリセルラータイトジャンクションから組織侵入を果たすことを見出した。本総説では,化膿レンサ球菌による細胞間接着分子群の傷害と細胞間隙経路を介した本菌の上皮バリア突破機構の関連について,最近の知見を紹介する。