日本細菌学雑誌
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ハブトキソイドに関する研究
II. 精製トキソイドの免疫原性
貞弘 省二
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1971 年 26 巻 7 号 p. 319-324

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抄録

1. 粗ハブ毒および精製した出血因子1 (HR 1)画分,出血因子2 (HR 2)画分の10mg/ml溶液にホルマリンを初め0.2% (v/v)に加え,pH 7.0で37Cにおき,さらに0.2%ずつ隔日に3回または4回追加すると,粗毒,HR 1およびHR 2はほぼ同様の経過を示して,約3週間で完全に無毒化された。
2. 粗トキソイド,HR 1トキソイド,HR 2トキソイドおよびHR 1・HR 2混合トキソイド(両者の無毒化前の活性比で約7:3に混合した)をリン酸アルミニウム・ゲルに吸着させて4種類の沈降トキソイドを作つた。それぞれのトキソイドをモルモットに3回注射してその免疫原性を比較した。
粗トキソイドおよび混合トキソイド免疫群は,抗出血価I (Anti-HR 1)および抗出血価II (Anti-HR 2)をともによく産生したが,HR 1トキソイド免疫群では抗出血価Iのみを,またHR 2トキソイド免疫群では抗出血価IIのみをそれぞれ十分に産生した。
HR 1トキソイドおよび混合トキソイド免疫群では,抗致死価は40∼80u/mlであつた。
3. 4種類の沈降トキソイドでそれぞれ免疫したモルモットに,粗ハブ毒,HR 1およびHR 2画分を筋肉内に注射して血中抗毒素価と防御能の関係を検討した。粗毒の攻撃に対してすぐれた防御能を示したのは,抗出血価IおよびIIをともによく産生した粗トキソイドおよび混合トキソイド免疫群であつた。しかし,いずれか一方の抗体のみを産生したHR 1トキソイドまたはHR 2トキソイド免疫群は,粗毒の攻撃に対して十分に防御することはできなかつた。

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