日本細菌学雑誌
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ブドウ球菌のマウス腎定着に関する研究
特に表皮株ならびに黄色株のserum-soft agar中における発育型との関連について
久野 宗和高橋 昌己吉田 耕作
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1975 年 30 巻 6 号 p. 693-697

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抄録

臨床材料よりえた表皮ブドウ球菌compact型株および対応するdiffuse型株,108 colony forming unit (C.F.U.)をマウス尾静脈より接種したところ,5株中2株のcompact型株に腎定着能が認められた。これら腎は肉眼的には膿瘍形成は認められなかつたが,接種後14日経過するもなお多数の生菌が検出されたのに反し,血液,肝臓,脾臓からは接種3日後には生菌を分離しえなかつた。つぎにこれら2株の接種菌量を変えてマウス尾静脈より接種したところ,1株においては106 C.F.U.により7日以上の腎定着能を認めたが,他の1株は同期間の定着には108 C.F.U.の接種を必要とした。
つぎに黄色ブドウ球菌Smith株のdiffuse型株,compact型株を用いたところ,compact型株では接種14日後には腎を除く各臓器から菌が消失したが腎からは108/100mgの菌が検出され,膿瘍形成が認められた。しかしながら,diffuse型株では特異臓器定着は認められず敗血症型の感染の経過をとることが認められ,黄株色においても腎定着はcompact型株の特異性と考えられた。

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