日本細菌学雑誌
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Bifidobacterium菌体成分の腸管吸収に関する研究
第1報 無菌マウスおよび普通マウスにおける〔3H〕ロイシン標識Bifidobacterium bifidumおよびその菌体抽出液の腸管からの吸収
岩田 和夫山口 英世内田 勝久平谷 民雄山本 容正
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1980 年 35 巻 3 号 p. 539-548

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抄録

腸管内のBifidobacterium bifidumの菌体アミノ酸ならびにタンパクがアミノ酸源として宿主生体に吸収,利用される可能性を検討するために,〔3H〕ロイシン溶液および〔3H〕ロイシン標識B. bifidum生菌,加熱死菌,菌体抽出液の各試料を普通マウスならびに無菌マウスの胃内に投与し,継時的に血清からの放射能回収率を測定し,以下の成績を得た。
(1) ロイシンを投与した場合には,普通マウス,無菌マウスいずれにおいても回収率は2∼4時間後に最高値に達し,時間の経過とともに徐々に低下した。最高値は0.2ml血清当たり2.8∼3.0%であり,24時間および3日後にほぼ1/2, 1/4にそれぞれ減少した。血清放射能の大部分は熱TCA可溶画分から回収された。
(2) 普通マウスに加熱死菌,加熱菌体抽出液,生菌および非加熱抽出液を投与した場合,いずれの放射能回収率も4∼8時間後に最高値に達し,以後下降傾向を辿つた。回収率のレベルは7日間の実験期間を通して上記試料の順に高く,回収率最高値(0.2ml血清当たり)はそれぞれ2.7%, 2.2%, 1.3%, 0.7%であつた。いずれの試料もロイシン溶液にくらべて回収率が最高値に達した後の減少速度がゆるやかであり,とくに生菌の場合には,その傾向がもつとも顕著であつた。
(3) 無菌マウスに加熱ならびに非加熱菌体抽出液を投与した場合には,普通マウスにおけるのと類似の回収率曲線が得られ,回収率最高値はそれぞれ2%, 0.6%であつた。一方,無菌マウスに生菌および加熱死菌を投与した場合,回収率レベルは前者の方が後者よりも高く,8時間後にみられた最高値はそれぞれ2.1%, 1.0%であり,普通マウスの場合とは逆の関係がみられた。回収率の減少速度は生菌投与マウスでもつとも遅く,最高値の1/2に減少するのに3日,1/4に減少するのに7日を要した。
(4) 以上の成績からB. bifidumの菌体アミノ酸およびタンパクは生菌,死菌,菌体抽出液いずれのかたちで投与した場合もマウス腸管から吸収,利用されること,その程度は試料の処理条件,とくに抽出処理または加熱処理の有無,および腸管フローラの有無によつて影響されることがみとめられた。

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