Moraxella bovisの臨床分離株およびtype strainの溶血物質について検討し,次のような結論を得た。
1. 耳漏由来の臨床分離株20株はウマ,ヒツジ血液に対し100%,ヒト血液に対しては80%,ウサギ血液に対し75%の菌株が溶血性を示した。
2. ハートインヒュジョン培地に酵母エキスを添加することによりM. bovisの増殖および溶血活性は良好となるが,酵母エキスに溶血物質産生促進作用があるとは考えられなかつた。
3. M. bovisの増殖至適pHは7.0∼8.0でありpH 7.5でもつとも増殖が良好であつた。pH 6.5∼7.5の範囲内では溶血物質産生状況に差異は認められなかつた。
4. M. bovisの溶血物質産生能はFe++, Mg++,還元剤,酸化剤,界面活性剤,レシチン,グルコースなどの影響はほとんど受けなかつたが,トリプシンを菌接種時添加することによつて抑制された。
5. M. bovisのsmooth形集落はrough形集落より溶血物質産生能が大であつた。
6. M. bovisの溶血性は培養後4Cに24時間放置した場合に大であり,とくに30Cで培養した後に低温処理した場合が活性が大であつた。
7. M. bovisの溶血物質は水溶性で菌体内には認められず,耐熱性,ニンヒドリン陽性,塩基性を示す低分子物質である。