日本細菌学雑誌
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学際的に見た慢性細菌性感染症とがん
青木 國雄
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2003 年 58 巻 4 号 p. 603-618

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抄録

筆者は1963年秋より米国 Philadelphia 市で肺結核登録患者の予後を疫学的に検討し, 肺結核患者は肺結核で高率に死亡するが, 生残者では肺がんのリスクが高いことを認めた。日本での疫学調査の結果も, リスクの大きさに差はあれ同様の結果であった。その後の世界各国で幾つかの調査が行われたが傾向は同じであった。しかし生物学的証拠は乏しかった。筆者の共同研究者は結核菌の cord factor がつよい tumor promoter であることを実験的に証明しその因果の一部を裏付けた。最近分子生物学的な研究は, 細菌感染でも過剰に遊離された活性酸素, free radicals, cytokines などが正常なDNAを傷害し, 炎症が頻回に繰り返されればがん化もあり得ることを示した。その他新しい結核菌研究は発ガンに連なる要因の出現が明らかになった。他のいくつかの慢性細菌性感染症でもがんのリスクが高い報告が続いている。慢性化した感染巣が発ガンの場を用意するようである。この感染発ガン仮説について学際的な立場から論議した。

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