育種学研究
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原著(研究論文)
ハイパースペクトルイメージングを活用したイネ幼苗における光合成産物含量の非破壊評価系の構築
牧 英樹岩橋 福松大毛 淑恵藤本 龍山崎 将紀
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電子付録

2025 年 27 巻 1 号 p. 7-18

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抄録

作物の品種育成で必要不可欠となっている表現型計測には多大な時間と労力が割かれていることから,その効率化が求められている.ハイパースペクトル(HS)カメラを利用したイメージング技術は,植物の内部状態を非破壊で解析できるだけでなく,目的とする情報の分布を可視化できる点が大きな魅力である.本手法の強みを活かし,植物における化学的ならびに生理的特性の解析を高速かつ簡便にすることを本研究の目的とし,その一例としてイネ幼苗の光合成産物含量の非破壊評価系の確立を試みた.日本型イネ品種「コシヒカリ」およびインド型イネ品種「IR64」の幼苗を様々な光条件で栽培し,HSカメラで撮影した画像から植物部分のHS反射率データを抽出した.撮影後のイネ幼苗は部位別に採集し,光合成産物(ショ糖およびデンプン)の含量をLC-MSの分析値から算出した.全体で葉身198点および葉鞘198点のデータを分割し,学習データと検証データとした.HS反射率データを説明変数,ショ糖含量およびデンプン含量を目的変数として,部分的最小二乗回帰(Partial Least Squares Regression: PLS)によって部位別に予測モデルを作成し,決定係数(R2)などを算出した.同一個体を経時的に撮影したHS反射率データに,作成したショ糖含量の予測モデル(葉身:R2 = 0.58,葉鞘:R2 = 0.73)とデンプン含量の予測モデル(葉身:R2 = 0.89,葉鞘:R2 = 0.68)を適用し,画素単位のショ糖含量およびデンプン含量の分布を推定したところ,連続的な光条件下で各含量が徐々に増加する様子を可視化できた.また,各含量の実測値では,先んじて葉身で増加し,遅れて葉鞘での増加が認められ,可視化画像においても同様の傾向が確認された.以上の結果から,HSイメージングを用いることで,イネの幼苗における個体レベルの光合成産物含量の差異や変化を非破壊で可視化できることが示された.

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