育種学研究
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イネ縞葉枯病抵抗性遺伝子Stvb-iを検出するSCARマーカー
早野 由里子斎藤 浩二藤井 潔遠山 孝通辻 孝子杉浦 直樹井澤 敏彦岩崎 真人
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2000 年 2 巻 2 号 p. 67-72

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抄録

日本におけるイネ縞葉枯病抵抗性の水稲品種の多くは, その抵抗性をインド型イネ品種Modanから受け継いでいる. Modanに由来するイネ縞葉枯病抵抗性遺伝子Stvb-iと0.0cMで連鎖するRFLPマーカーST10の塩基配列を解析し, PCR用のプライマーを設計し, これをST10プライマーとした. 多数の日本型イネ品種・系統を用いて, ST10プライマーによる増幅DNAのバンドパターンを調べたところ, Modanに由来するイネ縞葉枯病抵抗性の17品種・系統すべてから特異的に727bpのDNA断片が増幅し, 感受性品種10品種からの増幅は認められなかった. また, この727bpの増幅DNA断片はST10 (全長745bp) の一部であることを塩基配列によって確認した. コシヒカリ/朝の光のF2120個体のうち, ST10断片を増幅した個体はすべて抵抗性ホモ型もしくはヘテロ型であり, ST10断片を増幅しなかったF2個体はすべて感受性ホモ型であった. このことから, ST10断片の増幅の有無を指標として, イネ1個体の縞葉枯病抵抗性の有無を正確に推定できることが明らかとなった. これにより, ST10プライマーによるSCARマーカーは縞葉枯病抵抗性遺伝子選抜用マーカーとして利用可能と考えられた. なお, Modanを含めてStvb-iをもつと考えられる抵抗性の外国イネ9品種のうち, ST10断片の増幅が認められたのはModan, MudgoおよびIR8の3品種のみであった. Stvb-iとは異なる抵抗性遺伝子 (Stva, Stvb) を有する日本陸稲および外国イネ品種Zenithでは, ST10断片は増幅されなかった.

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