抄録
環境の異なるところで継続栽培された雑種集団はその集団内の遺伝子構成が異なってくることが知られ,この変化の機構について個体淘汰のほかに配偶体(花粉)淘汰も関係するのではないかと考え,本研究を行なった。遺伝子およびその遺伝様式既知のオオムギ6品種を材料として,5組合せのF1をつくり,これらF1の開花直前の穂を温湯処理(36~39℃,4分)して,そのF2世代の語形質の分離を,同一個体の自然受粉の場合のそれと比較した。取扱った形質は頴色(遺伝子,B,b),叢性・芒型(K,k),側列頴花の有無(Vt,vt),側列頴花の芒の有無(V,v),および葉鞘毛茸の有無(Hs,hs)の6形質であり,後者の4形質については無処理と処理区のいずれも理論分離比に適合し,花粉淘汰の効果は認められなかった(Table2,3-a,-b,-c,4,5および6)。