25 巻 (1975) 4 号 p. 242-247
イネにおいて日本型と印度型との2亜種の分化をもたらした主な要因として生育地の温度環境のちがいを想定して,これを実験的に確かめようとした。 放射線処理をしたイネの後代,M2からM5までの4世代を,青森(低温),埼玉および台中(高温)において継代栽培を重ねて,日本型と印度型との判別形質のうち,籾型,玄米のアルカリ崩壊性,種子の休眠性などについて環境の影響をみた。 この結果,温度の低い環境は籾型を短かく,アルカリ崩壊性を大きくする方向へ,温度の高い環境は籾型を長く,アルカリ崩壊性を小さくする方向への環境変異をもたらすことがみられた。M2世代においては,各種の形質について遺伝分散が増大しており,籾型では長短両方向への変異が増大していることが確められた。 この後代を4世代の間,温度環境の異なる場所に栽植採種をつづけたあとM6,M7世代を同一環境に栽培して,遺伝的変異の有無とその方向について検定したところ,サンプル数が少なかったために明瞭な結果ではないが,特定の方向への環境選択が行われているとの確証は得られなかった。供試集団の中には各種の遺伝変異が環境変異とともに混在しているもののようである。さらに長い世代にわたって異なる環境で継代栽培をつづけたあとに再検討を行えば興味ある結果が得られるものと考える。