育種学雑誌
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アブラナ属作物種子の発芽率に及ぼす貯蔵湿度と発芽温度との関係
徳増 智亀井 聡加藤 正弘
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1981 年 31 巻 2 号 p. 109-120

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抄録
ミズナ,カラシナおよびナタネ種子の休眠覚醒とその後の生存力に及ぼす貯蔵湿度と発芽温度との影響を見るため,採種後直ちにO,15,34,51および78%の空気湿度中に貯蔵し,以後一定期間毎に種子を取り出し,5,15,25,35および45℃の温度で発芽試験を行なった。発芽試験はミズナで8か月,カラツナで19か月,ナタネで11か月継続した。種子の休眠覚醒に対する最適の貯蔵湿度はミズナ35~50%,カラシナ15~50%,ナタネ0~35%で,その他の湿度区では休眠覚醒は不完全のまま推移し,乾燥または多湿貯蔵の休眠覚醒阻害の影響が認められた。また発芽温度に関しては,いずれの種類も,採種直後は15Cで発芽を始め,休眠覚醒と共に25,35,5℃の順に発芽温度域を広げ,45℃での発芽が最も遅かった。種子の寿命に対する貯蔵湿度の影響については,試験期間が短いため明らかな差異を認めなかった。従来の報告から生存力維持のための最適貯蔵湿度は20~30%付近と予想される。休眠覚醒後の種子の最適発芽温度は,ミズナ,ナタネで15~35℃,カラシナで15~25℃で,最低発芽温度はいずれも5℃以下,最高発芽温度はミズナでは45℃に近いが,カラシナ,ナタネでは45℃以上である。また種子の活力が衰えるにつれて,発芽可能な温度範囲が次第に狭められる傾向にある。一貯蔵湿度ならびに発芽温度の組合せから見ると,種子の発芽率は適温・適温区が最も高く,一方のみが適当な区がこれに次ぎ,両者ともに不適当な区が最も低かった。このような現象は,貯蔵湿度と発芽温度の効果はそれぞれほぼ独立的で,両者の要因が相乗的に作用して生じた結果と考えられる。
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