育種学雑誌
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ダイズ種子のオレイン酸とリノレイン酸含量の遺伝
高木 胖松尾 巧岸川 英利
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1986 年 36 巻 2 号 p. 163-176

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抄録

ダイズの種子の脂質に含まれるオレイン酸,リノール酸,リノレイソ酸の各含最の遺伝を知る目的で,オリヒメ(P1),松浦(P2)およびその雑種後代,F1,F2,B1,B2についてPOWERSによるPartitioning法を適用して遺伝分析を行たった。オリヒメ(P1)と松浦(P2)のオレイン酸含量には,2対の同義遺伝子A-a,B-bが関与するものと仮定した.オリヒメ(P1)の遺伝子型はAAbbでオレイン酸含量は44.O%,松浦(P2)はaaBBで51.5房である.F1,B1,B2の各集団の平均値にたいするそれぞれの中間値は,低オレイン酸が部分優性であることを示した.POWERSによる方法を適用して,P1(AAbb),P2(aaBB),F1(AaBb)集団の頻度分布から,B1(AABb,Aabb),B2(AaBB,aaBb),F2(AABB,aabb)の各遺伝子型の平均値と標準偏差を推定した.B1,B2,F2のオレイン酸含量の分布(観察値)と推定された遺伝子型から作られた各集団のオレイン酸含量の分布(期待値)を比較したところ,観察値と期待値とが良く適合し,上の仮説を支持することが認められた.各遺伝子の作用について,A-a,B-bの対立遺伝子の差は7.9%と5.6%で,それぞれオレイン酸含量を減少させる.AABBは32.7%,aabbは56.6%のオレイン酸含量で,相加的効果は大きく,優性効果と相加的効果の相互作用,エピスタシスが認められた.リノール酸含量はオレイン酸含量との間に高い負の相関(r=-0.988)があり,オレイン酸含量を支配する遺伝子は同時にリノール酸含量も支配していた.リノレイン酸はリノール酸の脱水素反応により生成すると考えられている.両脂肪酸含量の間には正の相関(r=0.682)が認められ,生成したリノレイン酸含量の多少はリノレイン酸/リノール酸(×100)で示した.このリノール酸からリノレイソ酸の生成過程に,Partitioning法を適用して遺伝分析を行なったところ,1対の遺伝子C-cが関与しているものと推定さ'れた.CC(オリヒメ)はcc(松浦)に比べてリノレイン酸を23%多く生産する.Cはcにたいして部分優性であった.

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