抄録
Lycopersicon属のF1 (L. esculentum×L. peruvianum var. humifusum LA 2153)と Solanum lycopersicoides (LA 2386) )の葉肉プロトプラストの電気的な対称融合により,多数の再分化個体を獲得した。順化した後の生育が順調であった30個体の中から,無作為に抽出した20個体の形態を分析したところ,全てが雑種性を示した。さらに,ランダムプライマーを用いたRAPD分析で雑種性の判定を行った.3種類のプライマー(OPA-11,OPA-16,OPK-13)で得られた融合親の種特異的なRAPDバンドによって,雑種性が確認された。次に,KpnIで処理した全DNAを用い,タバコの葉緑体DNA(pTB13)のBamHI断片をプローブとして,葉緑体DNAのRFLP分析を行ったところ,トマトとS. lycopersicoidesでは,それぞれ3種類の特異的なバンドが認められた。体細胞雑種15個体(結果が得られなかった5個体を除く)を同様に分析したところ,10個体にはトマト,5個体にはS.lycopersicoidesの葉緑体DNAが移行していることが確認された。両親の特異的バンドを合わせ持つ個体や,新しいバンドを持つ個体は見出されなかった。染色体数の分析では,分析した個体の半数以上が4倍体レベルの異数体であった。そして,それらは花牙を形成しなかった。一方,染色体数72の6倍体,48の4倍体と推定される体細胞雑種は,生育も旺盛で高い花粉稔性を有し,発芽力のある自殖種子が得られた。本研究では,F1 (L. esculentum×L. peruvianum およびSolanum lycopersicoides の組合せで,迅速かつ効率的に体細胞雑種が獲得できることが明らかになり,これらの3種ゲノムを有すると推定される体細胞雑種個体から,後代の展開が可能であることが示唆された。