育種学雑誌
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Oryza sativa L.とOryza glaberrima Steud.間の戻し交雑集団を利用したRFLP連鎖地図の構築と出穂期と花粉稔性に関するQTL解析
土井 一行吉村 淳岩田 伸夫
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1998 年 48 巻 4 号 p. 395-399

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抄録

イネ育種においてアフリカイネ(Oryza glaberrima Steud.)の潜在的能力を十分に利用することを目的とし,筆者らは日本型イネ台中65号を遺伝的背景とするO. glaberrima染色体置換系統群の作出を行なっている。これらの系統は固定系統で,それぞれの系統が少しづつ異なるO. glaberrima由来の染色体領域を持つようにRFLPマーカーによって選抜する予定である。その第一歩として,BC1F1集団を利用したRFLP連鎖地図の構築を行なった。また,BC2F1集団を利用し,花粉稔性と出穂期に関するQTL解析を行なった。構築されたRFLP地図はゲノム全体をよくカバーする101個のRFLPマーカーを含み,全体の長さは1403.4cMであった。各マーカーの配列は従来のRFLP地図とよく一致した。染色体4,5,6,11においてそれぞれ分離の歪みが見られた。特に染色体6ではO. glaberrima型の配偶子が増加する強い歪みが見られた。BC2F1集団を用いた出穂期に関するQTL解析では,染色体1,6,10にそれぞれ1%水準で有意なQTLが検出された。RFLPマーカーC1211(染色体1),XNpb27(染色体6)近傍のQTLはO. glaberrima由来の遺伝子が出穂を遅らせる方向に,XNpb37(染色体10)近傍のQTLは出穂を早める方向に,それぞれ働いていた。花粉稔性に関しては染色体3,7,10にそれぞれ1%水準で有恵なQTLが検出された。いずれもヘテロの状態で花粉稔性を低下させていた。染色体10においては非常に広い領域で花粉稔性との関与が検出され,この領域に強力な雄性不稔遺伝子が存在することが示唆された。

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