日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
社会性障害とアラキドン酸の作用機序
油井 邦雄小柴 満美子中村 俊濱川 浩
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 22 巻 1 号 p. 29-34

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抄録

不飽和脂肪酸のアラキドン酸は神経発達に重要な役割を果すので,ミラー入 0 ロン系を中心とした情報伝達・処理や志向性に関わる脳機能の発達不全とされる自閉症スペクトラム障(Autism Spectrum Disorders : ASD)の対人的相互性障害を改善し得ると期待される。アラキドン酸 240mg/日(12 歳以下は1/2)の臨床効果を 16 週間の double-blind placebo-controlled trial で検索した。アラキドン酸投与群はプラセボー投与群にくらべて,社会的ひきこもりとコミュニケーションが有意に改善した。神経細胞の signal transduction に関わっている transferrin が投与前にくらべてアラキドン酸投与群で有意な変動を示し,superoxide dismutase も投与前にくらべてアラキドン酸投与群有意傾向で変動した。社会的相互性障害の改善は signal transduction の upregulation によると推察された。

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© 2011 日本生物学的精神医学会
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