自閉症は,遺伝素因や環境要因により神経細胞や神経回路網の発達障害が引き起こされ,発症に至ると考えられている。遺伝学解析の発展により自閉症に関わる様々なゲノム変異が同定されてきたが,環境要因に関する根本的な分子機序は明らかにされていない。様々な環境要因の関与を探るためには,自閉症になりやすい遺伝素因をもつモデル動物が必要である。本稿では,比較的マイルドなリスク因子であるセクレチンとセクレチンレセプターの自閉症と類似した神経発達障害の症状について紹介する。そして,本変異マウスを用いた環境要因の同定について解説する。