日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
霊長類の大脳皮質領野特異的発現遺伝子の機能と発現制御機構
山森 哲雄
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2013 年 24 巻 1 号 p. 49-55

詳細
抄録

哺乳類の大脳皮質は,Brodmannらにより,領野から構成されていることが示されているが,その形成や機能制御機構はなお不明な点が多い。筆者らは,領野のよく発達した霊長類の大脳皮質において,代表的領野(一次視覚野,側頭葉,運動野,連合野)で強く発現している遺伝子を網羅的に探索し,一次視覚野と連合野で強く発現する2群の遺伝子を見出した。一次視覚野で強く発現する遺伝子(OCC1/FSTL1,5HT1B,5HT2A)は,網膜からの視覚入力を適正に調節し,日夜で107異なる光量の変化の下でも,安定した視覚の恒常性を維持するのに貢献していると考えられる。一方,連合野特異的に発現する遺伝子(RBP4,PNMA5,SLITs)は,錐体神経細胞の基部の樹状突起とスパインの形成を促進的に制御していると考えられるが,霊長類の遺伝子操作技術の最近の進歩により,その遺伝子機能の証明が可能になると考えている。

著者関連情報
© 2013 日本生物学的精神医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top