日本生物学的精神医学会誌
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Print ISSN : 2186-6619
運動ニューロンの老化と変性
勝野 雅央井口 洋平祖父江 元
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ジャーナル オープンアクセス

2013 年 24 巻 4 号 p. 185-190

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抄録

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,運動ニューロンを選択的に障害する神経変性疾患である。孤発性 ALS患者の運動ニューロンでは,RNA結合蛋白質であるTDP-43が本来の局在である核から消失するとともに細胞質内に凝集体を形成し,断片化・ユビキチン化・リン酸化などの修飾を受ける。筆者らは,ニューロン系培養細胞およびマウス初代培養ニューロンに酸化ストレスを負荷するとALS患者で見られるのと同様なTDP-43の局在異常や病的修飾を誘導すること,およびTDP-43の量的低下によりニューロン機能が低下することを見出した。また,運動ニューロン特異的にTDP-43の発現を抑制したマウスでは加齢依存性の運動ニューロン変性が生じ,ALSに類似した運動ニューロンの病理学的変化が認められた。これらの結果は,TDP-43の機能低下が,ALSにおける運動ニューロン変性の病態に深く関与していることを示唆している。

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© 2013 日本生物学的精神医学会
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