日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
α波とデフォールト・モード神経回路
松浦 雅人
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 25 巻 4 号 p. 191-195

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抄録

1929 年に Hans Berger はヒトの頭皮上から記録した脳波を初めて報告し,安静状態でもα波が絶えず振動していることから脳が常に活動し続けていると述べたが,その後α波は脳が休息している idle rhythm にすぎないと考えられるようになった。2001 年に Reichle らは安静状態で内側前頭葉や内側頭頂葉のエネルギー代謝が増大していることを指摘し,デフォールト・モード神経回路(DMN)と呼んだ。DMN は目的志向性の課題遂行中には活動が抑制され,外部刺激から解放され内的思考に従事しているときに活性化する。α波は安静時に増強することから DMN の電気生理学的指標と考えられるが,異なった神経活動が複合した振動現象であることから,どのようなα波の性質が DMN 機能を反映するかについては精緻な解析によってさらなる研究が必要である。最近は各種の精神神経疾患で相次いで DMN 障害が報告されつつあり,その機能は脳ネットワーク全体の挙動に関する根本的なものと考えられる。α波はさまざまな状況で容易に記録できることから,いまだ十分にわかっていないDMN 機能の解明に有用な武器になると考えられる。

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© 2014 日本生物学的精神医学会
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