臨床研究は当事者・家族の協力を得て行われることが多いが,その研究成果が当事者・家族に報告され,共有されることは現状では極めて少ない。研究者の発見の成果は,雑誌に公刊されなければ確認されないという仕組みが,研究成果の公表を巡って政治的な事態を惹起することがある。また,大学や研究所の独立行政法人化に伴う,研究成果の要請が強まったことも公表を巡ってさらに複雑な事態を生じている。例えば,発表の前に特許等を申請し,研究方法や結果を守るために発表を遅らせたりするという動きである。しかし,研究者が当事者や家族を研究のパートナーとして認識していないという問題が最も基本的な問題である。 そのような問題を改善していくには,研究者が当事者・家族を研究の同志とする見方を確立することが第一に必要である。その上で研究者の発見を迅速に保護する仕組みの創成や,研究所や大学には,当事者・家族などを研究パートナーとして,研究者と協働していく常設部署の設置などが有効と思われる。