日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
iPS細胞からみえる統合失調症の病理と今後の発展
豊島 学吉川 武男
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2018 年 29 巻 3 号 p. 119-123

詳細
抄録

近年のiPS細胞技術の進歩により,iPS細胞から神経幹細胞や神経細胞が作製可能となり,患者由来のサンプルを用いて統合失調症のさまざまな病因・病態仮説を検証できるようになった。我々は統合失調症の発症脆弱性基盤として支持されている神経発達障害仮説に注目し,22q11.2の微細欠失を持つ統合失調症患者由来iPS細胞を用いて,神経分化・発達の異常にかかわるマイクロRNA(miRNA)の分子病態について解析した。患者由来の神経幹細胞では,神経細胞への分化効率の異常など神経発達障害を示唆する表現型がみられ,これらの異常は特定のmiRNAやp38の発現変化がかかわっていることが明らかになった。更に,統合失調症患者死後脳においても,神経細胞とアストロサイトのマーカー量比に異常があることが判明し,脳発達期における神経幹細胞の分化効率の微細な変化が,統合失調症の病因の可能性の一つであることが示唆された。

著者関連情報
© 2018 日本生物学的精神医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top