日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
統合失調症は,本当に神経病理学者にとって墓場か?
入谷 修司
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 30 巻 4 号 p. 141-146

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抄録
かつては,精神神経疾患の病態解明の方法は,解剖学や脳を顕微鏡で観察する神経病理学的手段が主であった。現在の精神医学の礎をつくったドイツのクレペリンも,精神疾患の原因は脳神経の機能の問題として捉えて脳の観察を精力的にすすめた。その中で,アルツハイマー病などの疾患単位を見いだした。しかし,その後いわゆる統合失調症のような内因性精神疾患の病因病態は神経病理学的手法では見いだせず,“統合失調症は神経病理学者にとって墓場”とまでいわれた。近年,組織病理の研究手法の進歩や,神経画像技術の進歩,分子生物学的研究などの発展から,再度,精神神経機能の首座である脳でなにが起きているかの検証が必要となってきた。統合失調症をはじめとする精神疾患の病態解明にあらたな視点の神経病理学的研究によって神経画像や分子精神医学の成果を脳組織に収れんさせる時代になろうとしている。そしてそのためにも,研究リソースの脳組織の蓄積は重要で,日本版ブレインバンクの成功が待たれている。
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© 2019 日本生物学的精神医学会
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