精神疾患は,家族集積性を認め多因子遺伝を示し,臨床的・遺伝的に異種性を呈する複雑でありふれた疾患である。その異種性を軽減するための有用な中間表現型として,認知機能,脳構造,性格傾向などが挙げられる。中間表現型の障害も精神疾患と同様に遺伝要因がかかわることから,精神疾患と中間表現型間に共通する遺伝基盤の存在が想定されている。これまでに種々の精神疾患や中間表現型の大規模全ゲノム関連解析(GWAS)が行われ,多くの関連ゲノム座位が同定されている。一方,より強く関連するゲノム座位の同定を試みるGWASに対して,ポリジェニックリスクスコア解析やLDスコア回帰解析では,全ゲノムにわたる遺伝子多型情報を利用して,精神疾患間や精神疾患と中間表現型間における遺伝的基盤の共通性の検討が可能である。本稿では,これら解析技術を用いた精神疾患間や精神疾患と中間表現型間の遺伝的共通性や疾患特異性について筆者らの研究を紹介する。