児童青年精神医学とその近接領域
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症例研究
思春期の4年間を病棟で過ごした摂食障害女児の治療経過
─こころが自由になること─
黒江 美穂子宇佐美 政英渡部 京太齊藤 万比古
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2016 年 57 巻 3 号 p. 458-470

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抄録

10歳で神経性無食欲症を発症した女児の,長期入院治療を経験したのでここに報告する。女児の強固な拒食病理や完璧主義的思考により,経過は一進一退であったが,徐々に心身の健康と年齢相応の自立志向性を獲得していった。女児の症状形成過程および入院治療が長期化した背景にある精神病理を考察し,治療においては身体管理や生命の保護のみならず,治療スタッフの関わりによる基本的信頼感の構築,さらに同年代仲間集団との交流といった複合的な機能を担った児童思春期専門病棟の意義について述べた。また家族療法の導入により,治療者が多角的,重層的な視点から症例を捉えられたこと,両親が親としての支持機能を回復し,特に母親が活き活きと情緒的応答性を取り戻したことが,回復の鍵となった。

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© 2016 一般社団法人 日本児童青年精神医学会
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