臨床化学
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NCCLS勧告案を用いた検出限界提示法に対するCRP定量法での実験例
吉本 茂細萱 茂実多田 正人石田 繁則青木 義政中 恵一
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キーワード: 定量限界, 最小検出感度
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2000 年 29 巻 4 号 p. 184-191

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抄録

臨床化学分野において測定法の性能評価法の一つである最小検出感度を提示する方法には数種の報告がある。しかし, 合意の得られた表現方法, およびその標準化された作業手順はない。したがって, 実験者によってさまざまな手順で評価され表現されているのが現状である。日本臨床化学会はこのような状態を改善し, 検出限界提示法を目的としたプロジェクト研究を1997年に立ち上げた。このプロジェクト研究の作業グループはすでに先行していたNCCLSの同種の勧告案についてまず検討を開始した。同勧告案は, 目的成分を含まないゼロ濃度試料の測定結果よりバラツキの限界を定め, これと有意に区別すべき2つの値, 検出限界と定量限界を求めていることがこれまでの方法とは違った考え方である。検出限界はゼロ濃度と区別する上で, これまでの3SDで示す方法と類似している。一方, 定量限界は, 検出限界以上の濃度で信頼のある結果を報告することのできる性能をいう。その妥当性を検証するため実際の例としてCRP測定を対象検査項目として実験を行った。この結果, 次の問題点を示した。1) マトリックス効果を無視するためのゼロ濃度試料の調達が困難な場合, 本法を適応することがむずかしい, 2) 実際の臨床上の単位で評価するため, SI 単位で正確に値付けがなされた試料を調製しなければならない, 3) 安易に2つの測定方法を比較できない。

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© 日本臨床化学会
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