2022 年 1 巻 1 号 p. 288-296
鋼製構造物のメンテナンスにおいて,各部材の残存板厚を把握することが構造物の現在の状態および将来に向けた補修・補強および更新を計画するうえで極めて重要になる.しかし,従来の板厚測定方法である超音波厚さ計やマイクロメータを使用する場合,事前準備として錆部の除去が必要となり,また水中部での測定が困難になるなど,作業手間や環境条件により制約を受ける.そのような問題を解消するための新たな非破壊検査技術として,鋼材内部にまで浸透させた渦電流から板厚を検知する極低周波渦電流探傷法(ELECT)による長期供用中の鋼製構造物の腐食部残存板厚測定を試みた.その結果,従来の測定方法と同等の測定精度を得るとともに,錆等の腐食物の除去が必要無い利点を活かした大幅な測定時間の短縮が実現できることを確認した.