2005 年 2005 巻 800 号 p. 800_37-800_50
モビリティへの欲求の高まりを受けて移動の質の改善が急がれるが, 既存のLOS概念に基づく設計法では, 限られた空間の中に健常者と移動制約者に跨る様々な利用者のニーズを反映させることは困難である. 本稿では, 移動の質の定量化に基づく歩行空間の評価方法と代替案の設計方法を提案している. また, ケーススタディとして, 2005年日本国際博覧会における西ターミナル利用者の歩行空間整備を取り上げている. ケーススタディでは, 降車点と会場ゲートを移動する間に利用者にかかる負のストレスを軽減するため, 移動の質に関するアンケート調査を実施し, 移動容易性, 空間快適性, 情報提供性, 介助性の4つの軸に基づき, ムービングウォーク, 休息施設, 案内所の配置等による移動の質の改善効果を試算している. さらに, この定量化に基づく代替案の設計と, 技術者がファシリテータとなった最終代替案の選択方法を示している.