地下鉄道における熱収支の主な構成要素は, 従来, 列車発熱等の内部発熱, 換気による熱の移動, 壁体の吸放熱作用が考えられてきた. しかしトンネル区間と明かり区間との接続あるいは地下水位の高い区間と低い区間がある場合等のように各駅およびトンネルが熱的に対称でない路線では, 列車車体の金属材料が蓄熱運搬する熱量が各駅間の熱収支に影響を及ぼすことが考えられる.
そこで壁体および地中の熱流を周波数応答によりモデル化し, 車体交換熱量を含めて温度と熱流をフーリエ級数に分解して全路線の熱バランス式を立て, これを解いてから合成して温度を求める熱収支理論を提案した. 提案理論に基く数値計算により実測値と対比するとともに地下鉄道モデルの試算も行った.