土木学会論文集D1(景観・デザイン)
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和文論文
大正期の京都三山の鋼索鉄道建設にみる眺望景観評価に基づく風致保全
谷川 陸山口 敬太川崎 雅史
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2022 年 78 巻 1 号 p. 31-48

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抄録

 本研究は,大正期の京都三山における鉄道開発に対する眺望景観保全の実態を,[1]開発許可申請の手続き,[2]眺望景観の評価手法,[3]風致維持の方策,[4]風致保全の理念,の観点から明らかにし,以下の成果を得た.[1]許可申請においては,京都府土木課が計画段階から事前協議を行い,技師の調査や社寺課の意見に基づき風致指導を行った.[2]眺望景観の評価においては,市街地内の名勝や道路・橋梁からみた中遠景を基準とし,望見区間を明示するなどの技術的手法をとった.一方,不許可の場合には,山稜構成樹木の伐採等をその根拠とした.[3]風致維持方策としては,谷を通る経路選定,樹木による構造物の遮蔽等の指導が行われた.[4]山容・山姿の美しさだけでなく,史蹟・名勝の歴史的価値,神域・霊域の尊厳が重視され,その際には社寺課の意見が尊重された.

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© 2022 公益社団法人 土木学会
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