2022 年 78 巻 1 号 p. 64-83
本研究は,石垣島の赤瓦屋根を対象として,「地域らしさ」をその客観的特性とともに,住民等の主観的な認識に基づいて評価し,時代によって変化しながらも持続可能な「地域らしい」景観形成の可能性を探るものである.各赤瓦屋根の街並み景観の形成過程を整理した上で,在来赤瓦屋根家屋の居住経験の有無と,集落ごとの赤瓦屋根に関する特徴の違いに着目して,住民による愛着・選好の特徴を分析した.その結果,在来形式の赤瓦屋根への愛着・選好形成の一部は赤瓦屋根に関する生活経験に基づき,行政施策により形成された赤瓦屋根への愛着・選好形成の一部は在来形式との比較に基づくことを示した.行政施策の推進や新たに形成される赤瓦屋根への愛着・選好を在来形式の赤瓦屋根が支えていたことを確認し,今後のまちづくりへの課題を指摘した.