2022 年 78 巻 1 号 p. 84-95
本研究は,和歌表現を通じて歴史的に形成された場所固有の景物と場所のイメージの特徴を,その領域性に着目して明らかにするものである.具体的には,京都西山を対象に,近世地誌・名所案内記類から抽出した和歌を,その表現や景物,場所の歴史的・社会的文脈に基づいて類型化し,和歌に詠まれた場所のイメージの特徴について考察を行った.また,イメージの類似性に着目して,場所ごとのイメージの関係性やそれらの時代変化を考察した.その結果,複数の場所間で高い類似性・共通性をもつ,イメージの領域的なまとまりが形成されていたことを明らかにした.また,この領域内において,時代を越えたイメージの継承や再形成が認められたことを明らかにした.