2015 年 71 巻 2 号 p. I_29-I_38
鋼構造において,脆性破壊は高速で伝播し,構造物全体に致命的な損傷を与える可能性が高いが,その支配方程式は明らかにされていない.近年では局所限界応力モデルに基づく検討が多くなされているが,それには亀裂先端近傍の応力や塑性ひずみの正確な評価が必要である.そこで本研究では有限要素法を用いた亀裂先端近傍場の性質の評価を実施するために動的2次元平面ひずみ問題を対象とした基礎的検討を実施した.まず,節点力解放法による動的亀裂伝播について弾性問題を対象とした検討を行い,適切な亀裂伝播のモデル化手法を明らかにした.さらに,降伏応力のひずみ速度および温度依存性を含む材料非線形性を考慮して系統的な動的亀裂伝播解析を実施し,従来未解明であった動的亀裂伝播の速度履歴や温度勾配が亀裂先端近傍応力に与える影響を明らかにした.