2009 年 65 巻 4 号 p. 269-276
泥質堆積物の再懸濁時における酸素消費過程を明らかにするために,有明海湾奥部の泥質堆積物を用いて化学的酸素消費および生物学的酸素消費実験を行った.化学的酸素消費速度は時間変化が大きく,0-5mm層では実験開始から30分まで減少し,それ以後は0値を示した.一方,生物学的酸素消費速度の時間変化は小さかった.化学的酸素消費量の寄与率は,実験開始から60分まではいずれの層においても80%以上を占め,360分後においても60%以上を占めた.堆積物下層ほど,すなわち酸化還元電位が低下するほど化学的酸素消費の継続時間は長くなることが明らかになった.堆積物の再懸濁時の酸素消費過程では,化学的酸素消費の非定常性,再懸濁される層厚,還元物質量の鉛直分布および再懸濁されてからの経過時間が重要であることが示唆された.