2010 年 66 巻 3 号 p. 289-301
本研究では海洋レーダを用いて,有明海内における淡水の挙動の観測を試みた.海洋レーダの受信電力の変動について検討を行った結果,観測海域の塩分の低下は海洋レーダの受信電力の低下として現れることが理論的にも,観測結果からも確認された.筑後川出水後の受信電力の低下箇所は,有明海の北西部から徐々に南下していく傾向が見られ,風速及び表層流を含めて検討した結果,表層塩分が低下した箇所に対応している.また,受信電力から推測された河川水の流出経路は,既往の研究で指摘されている流出経路とよく対応しており,海洋レーダの受信電力を用いることにより,海域においける淡水の挙動を計測できる可能性が示唆された.