2010 年 66 巻 4 号 p. 344-358
太田川放水路に形成されている干潟の特性を明らかにするために,1996年から2008年にかけて底質,水質の経年変動,生物分布および有機泥の捕捉調査を行った.さらに,生態環境の形成に果たす河川構造物の役割について検討するために,生物分布,底質,地下水質,地下水位調査を行った.調査結果より,二枚貝の棲息には地盤内の間隙の保持等,地下水流動によって起こる二次現象が重要であることを明らかにした.また,護岸前後に形成された水位差によって促進される地下水流動が地盤内の間隙への有機泥の堆積抑制等に寄与していることを明らかにし,地下水環境を考慮した河川構造物の構築により安定した多様な生態環境が形成されることを示した.