2011 年 67 巻 1 号 p. 1-13
本研究では,水力発電施設の災害や事故による社会的影響を対象に,その分析手法や分析結果の効果的な活用方法について検討する.まず,過去の水力発電施設の被害事例の調査や分析を通じて,将来的に懸念される社会的影響発生のシナリオを構築する.次いで,過去事例にも散見される水力発電施設からの溢水が発生するシナリオを対象に,その定量的な分析手法について検討を行う.最後に,事例分析として,仮想的な水力発電施設や地域の人口・経済データを対象に,導水路損壊による社会的影響評価を実施し,被害額や発電による便益の観点から,災害対策優先度などの水力発電施設の維持管理戦略への反映可能性について考察した結果を報告する.